ああ、今日もだ。
また夜中に目が覚めちまった。理由は…もう気付かねーフリもきかねえな。
真っ暗ななか、視線だけを携帯に向ける。ベッドの上に放置されたそれ。もしかしたら眠っている間に連絡があったかもしれないと期待する。誰からのかって?そりゃあ…そんな事、聞くなよ。

しゃくだと感じながらも、いつだって期待と誘惑に弱いのがオレだ。意志が弱いなんて言ってくれるな。目の前にあるものは我慢できないたちなんだよ。
二つ折りのそれを開く間さえもどかしく思いながら、ディスプレイを確認する。光が暗闇に慣れた目に眩しい。お待ちかねの着信は…

「…ちぇっ。」

…ゼロ。
念のため受信を確認する。オレの待ち人はメールなんて打たないって知ってるけど、それでも。オレって健気だよな。忠犬みてー。ちっとも笑えねえんだけど。…それでも。

いっそ携帯ブッ壊しちまおうか。一瞬だけそんなバカげた考えが頭をよぎった。そんな事した日には後から死ぬほど面倒くさくなるって解りきってるからしねーけど。それくらいの理性は残ってる、つもりだ。どうにも言い切れないのが怖いな、我ながら。

時刻は午前2時。用済みになった携帯を放り出す。これじゃあお前時計とかわらねーじゃねーか。いや、ただの時計のほうがマシだ。だったらここまで人を落ち込ませる事もない。そうだろ?

寝返りを打ってシーツに顔をこすり付ける。唸り声あげたって何の解決にもならない。「うるせー」って後ろ頭叩いてくれるやつが隣にいないんだから。

「ああ………」

提案1。
眠れそうにないから走って来ねー?
ああ、駄目だ。ロマーリオにキー取り上げられたんだった。夜な夜なムチャな運転されたら自分たちのほうが生きた心地がしない、ってよ。なんでバレたんだ。つーかいつから知られてたんだろう?ナゾだよな。まあそこはさすがオレの部下って感じだな。この件についてはちっとも全く、これっぽっちも有難くねーけど。っていうよりもさ、恥ずかしいじゃんかなんか…。

提案2。
適当な相手を見繕って、呼んでみる。
…駄目、なんかもーそういう気力もない。めんどくさい。おもしろくない。
断っておくが、枯れた訳じゃねーぜ。飽和したんだ。大概のことが望みどおりになるってのも、なかなかどうして不幸な事なんだよ。たまにならそういうのも良いと思うけどな。今は…

…今は。…やっぱり、これっきゃねえのか?


提案3。
リダイヤルを押す。


もーさ、意地張るのにも疲れたっていうのが正直なとこだ。
たった指一本で済むんだぜ?それだけの事がこんなにも思うとおりにいかないなんて、一体いくつなんだオレは。

こうやって甘やかすから駄目なんだ。オレばっかり悩んで夜も眠れなくて連絡待って車ぶっ飛ばして叱られたり、散々じゃん?

…もーいいよ。ラクになっちまおう。ボタンをひとつ押して、息を詰める。
無事耳に届いてきた呼び出し音にほっとする。
ひそかに、着信拒否になってたらどうしよう、とか思ってたのは秘密だ。

「なんだ?」

なんだ、じゃねーよバカ。
前にあった時ケンカしてから、どれだけ話してないと思ってんだ。
どーせオレから折れるってタカくくってたんだろ、これで気が済んだかよ。

「ディーノ?」

…駄目だ。
絶対文句言ってやろうと思ってたのに、声を聞いた途端そんな気もさっぱり失せちまう。なんでそんな声で呼ぶんだよ。リボーンのくせに。反則だ…大好きだ、お前が。本当に。最悪だよな。

「……会いてーよ、リボーン」

「無理だぞ」

「……………」

あっさり言うなよ!オニかお前は!

今何処にいるんだ?って訊いたら地球の裏側、とかいう答えが返って来た。っていうか黙ってそんな遠くに行くなよ。何度言や解るんだ。

…ふーん。いいぜ。お前がそういうつもりなら。
笑ってられんのも今の内だぜリボーン。
明日抜き打ちでキスしにそっちへいくから覚悟しとけ。めっちゃくちゃに抱き締めてやる。

この跳ね馬を放ったらかしにした罪は重いぜ。せいぜい乗りこなしてくれよ、オレの、バンビーノ。






※2006/8/24 ブログUP



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