闇の中、差し伸べられた手は天使のそれではなくて

「ぼくは天国へはいけない」/ディーノ





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「彼はヒットマン」/リボーン
彼はヒットマン 一流の殺し屋
彼はヒットマン 射撃の名手

名の知れた遊び人が言った、
「あいつにくらべりゃオレなんて可愛いもんさ」

そう、彼はヒットマン 愛人は数知れず
でもなぜか 彼をうらむ女はいない

「人よりうまくやってるのさ」、
酒をなめながら 遊び人は言うけれど

彼はヒットマン 一流の殺し屋、
彼はヒットマン、誰の心にも棲みつかない


彼の愛人は言いました 罪のない笑顔で
「あなたも涙を流すときがあるの?」

彼はヒットマン、帽子を目深にかぶって
射撃よりヒットマン、聞こえぬふりがおとくい


心弱いマフィアのボスはたずねます
「ヒットマン、どうしたらいい?
 あなたのように強く生きるには。」

ヒットマンは答えます
「もちろん秘訣があるのさ、
 耳打ちするから眼を閉じな」

言われたとおり眼を閉じたボスは

だけど 心臓 撃ち抜かれ


ヒットマン、誰の心にも棲みつかず
ヒットマン、帽子を目深にかぶり
ヒットマン、誰とも目をあわさず
ヒットマンは 今日も


彼はヒットマン、一流の殺し屋
彼はヒットマン、射撃の名手

彼は 今日も ヒットマン





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「思い出ばかりがふえてゆく」
/リボーンとビアンキ
思うに、あなたの居場所になりうる女性なんて
この世に存在しないのじゃないかしら?

―――もちろんそんな事、あなたには云えない。

もっともあなたには痛くも痒くもないのでしょう、
「別れ際の女の台詞と来たら、申し合わせたように同じだ」
そう言って小さくおわらいになるだけ。

くちびるの片方だけをあげる、
他人に捻くれた印象を与える彼の笑いかた。
私が一番すきだったあの人の表情。
それを思い浮かべながら、
今ではその後姿を見守っている。

バルコニーから身を乗り出せば、そこからあなたがいやに小さく見えた。
それから目を逸らさずに、わたしはフィルターを噛む。
あなたは女の煙草をきらう人だった。
だからこれは、私の人生ではじめての煙草。

胸一杯に吸い込み、吐き出すと、見慣れた後姿がぼやけて見える。
けむりの所為かしら、そう思った途端、こらえていた涙が零れた。

ねえ、わたし、今ならわかるのよ。
あなたと私がひとりぼっちだった理由。
今でもあなたはそれを知らないのでしょう。


あなたの姿は人込みへのまれ、
とうとう視界から消えてしまった。
 

「可哀想なひと」


あなたの弱さを教えてくれるひとにあなたがいつかめぐり会えますように。












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