火の番を任されたオレは、それからしばらくして、リボーンの様子がおかしいことに気付いた。

少し離れたオレの場所からじゃ、かすかに上下する体の動きでしか確認できないけど、その呼吸がいやに浅い気がした。

薪の弾ける、パキッ、という音に、必要以上にどきりとする。
思い出した。最初の夜、この音に混じって聞こえたのは、オレの気のせいじゃなく本当にリボーンの溜息だったんだろう――なんだか、いやな予感がよぎった。


「……リボーン?……」


起こしちゃ悪いと思いつつ、どうにも我慢できずにかけた声には返事がなかった。
控えめすぎたのかも、と今度はその都度トーンをあげて呼んでみる。――同じことを4回繰り返したけれど、どれも結果は同じだった。

オレはとうとう立ち上がり、火をはさんで向こう側、リボーンのそばまで歩みよった。

いつも思うけど、横たわって眠るリボーンは、なんだか普段より小さく見える。

その横に膝をついて、顔をのぞきこんでみたものの、起きてんのか眠ってんのか、こうしただけじゃわからないんだよな、こいつの場合。

とりあえず、いつでもぱっちり開いてるその目を、オレはじっと見てみる。……やっぱりわかんねー。でもまあ、こうしてても何も言わないんだから、本当に眠ってるんだろう。

そのことが逆にオレを不安にさせた。だって、ここまでして起きないって、こいつにしちゃ無防備すぎるんじゃねー?

思ったとおり呼吸も浅く、短かった。
もしかして、熱があるんだろうか?そう思った途端、確認せずにいられなくなった。今度こそ間違いなく起きるだろーけど、ぶん殴られても、いいや。

せまいその額へとそっと手を置いてみた。――やっぱり、熱い。オレの眉が寄るのと同時に、リボーンの体がかすかに動いた。


「・・・なんだ。まだ暗いじゃねーか」

「……リボーン。お前、熱出てるぞ」

「…そーか」

「いや、そーか、じゃなくてさ…。やっぱ、傷のせいなんじゃねーのか?」

「さーな。なんにしても寝りゃ治る。寝かせろ。」

「……」

「…本当だぞ。」


信じろ。

いぶかむオレに、またヒステリーを起こされるんじゃと危ぶんだのか、リボーンは比較的おだやかな口調で言い聞かせた。

そう言わちゃオレもそれ以上の追求はできず、黙っていると、少ししてまた浅い呼吸が聞こえ出した。


「………」


言い包められた感がどうにも否めず、オレは溜息をついた。
確かに熱がある割に具合の悪そうな感じはないし…大丈夫なのかな――そう思ったんだ、その時は。



リボーンの全身に湿疹があらわれたのは、その数時間後、朝日が周囲を照らし始めてからだった。

抱き上げられてもなおこんこんと眠り続けるリボーンに、オレはどうすればいいか解らず、信じろって言ったじゃんか、途方に暮れてそう呟いた。


「どーすりゃいんだよ……」









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